虚無なダービー

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東京競馬場の空は、どこまでも青かった。

あれだけ胸を焦がした日本ダービーが終わったというのに、空だけは何事もなかったように澄み渡っている。

ダービーが終わった後の、あの静けさってあるんですよね。勝っても負けても、少しだけ世界が遠くなる感じです。

自宅のテレビの前で最後のレースを眺めていた。

現地ではまだ歓声が上がっている。

その音は、どこか遠くの世界の出来事のようだった。

ダービーで熱をまた持ち、以前のように予想を重ねた。

仕事が終われば競馬のことを考え、寝る前も競馬のことを考えた。

そして迎えた日本ダービー。

ゲートが開いた瞬間、心臓が飛び出しそうになった。

最後の直線。

叫んだ。

拳を握った。

夢を見た。

だが――。

あそこまでは、確かに夢を見ていたんですよ。だからこそ、外れた瞬間にただの負けでは終われなかった。

その夢は、ゴール板の前で静かに散った。

馬券は外れた。

いや、それだけではない。

勝った馬は強かった。

負けた馬も全力だった。

誰も悪くない。

だからこそ悔しかった。

「終わったな……」

誰に言うでもなく呟く。

その言葉には、敗北だけではなく、祭りの終わりの寂しさが混じっていた。

誰かのせいにできる負けなら、まだ楽なんです。でも、みんな全力だったからこそ、余計に残るものがある。

一年で一番特別なレース。

競馬ファンにとっての夢舞台。

その日が終わった。

まるで夏休み最終日の夕方のように。

まるで文化祭の後夜祭が終わった後のように。

胸の奥にぽっかり穴が空いている。

その後の目黒記念なんて見る気力もなかった。

勝利の余韻に浸る人。

外れ馬券を見返す人。

もう次の重賞の話をしている人。

自分だけが、少しだけ立ち止まっていた。

ダービーの後って、すぐ次に行ける人もいる。でも、少し立ち止まる時間があってもいいと思うんです。

燃え尽きていた。

SNSも開かない。

予想ノートも閉じたままだ。

静かな部屋で天井を見上げる。

そして不思議なことに、少し笑った。

「来月……か、、」

燃え尽きた灰の中に、まだ小さな火が残っていることに気付いたからだ。

完全に消えたと思っていた火が、まだ残っていた。たぶん競馬ファンって、そういう生き物なんですよね。

競馬ファンは何度負けても競馬場へ戻る。

夢が終われば、また次の夢を探す。

自分には競馬だけじゃない。

他にもある。

来月は、とある物で魂を燃やそう。

スロットである。

大好きな台。

そして、6月の新台。

戦国乙女。

安田記念、宝塚記念はいったん忘れよう。今はもう、別のゲートが開く音がしている。

安田記念、宝塚記念は忘れよう。

心のどこかで、もう別のゲートが開く音が聞こえた。

ダービーは終わった。

そのことだけが、少しだけ救いだった。

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